エゴイスト  〜リョーマside〜





最近、好きな人の事をよく考えるんだ。

…誰の事、とかじゃなくて、どういう人の事を「好き」っていうのかを考える。

守ってあげたくなる人?自分の事を好きだと言ってくれる人?

…わかんない。周助が好きな気持ちは、確かだと思うけど…

英二先輩の気持ちが拒めないのは、何故…?


「おチビ、大丈夫?やっぱもう少し休んだ方が良かったんじゃない?」


黙り込んでいる俺を、疲れていると思ったのか、英二先輩は心配そうに聞いてきた。


「平気ッス。ちょっとボーッとしてただけッスから…」


あの後、英二先輩はそれ以上の事をしてこなかった。

何度かキスをして、抱きしめ合って。

それぐらいなら…と思って、俺も拒む事はせず、英二先輩のしたいようにさせた。


「今日はごめんにゃ、連れ回しちゃって」

「…今更何言ってんすか」


俺が呆れて言うと、英二先輩は苦笑しながら、「それもそうだね」と呟いた。

…何だか、英二先輩が弱気な気がする。


「先輩?…どうしたの?」

「ん〜別に?ただ…」


言いかけた英二先輩が、動きを止めた。何かと思って、先輩の視線の先を探る。

…!周助…?


「やぁ、リョーマ。心配したよ?連絡しても繋がらないし、家の人に聞いたら出かけたって言われるし…」

「周助…?」


怖い…。周助の周りの空気だけ、氷ったように冷たい。

英二先輩も、ヤバイと言いた気な表情で固まっていた。


「楽しかった?初めての相手が、英二で良かったね」

「ちょ、周助!?何、言ってるの…」

「白を切るつもりなの?君達がホテルから出てきたの、知ってるよ」


周助の瞳は、いつものような温かさはなかった。

切れ長で色素の薄い瞳が、今はとても怖い。


「ちょ、ちょっと不二!何でお前が来るんだ?」

「…英二。君は手塚に行動させたかったみたいだね?でも手塚は、一筋縄じゃいかないよ?」


周助はクスクスと笑った。

よく解らないけど、英二先輩にとって、此処に周助が来るのは計算外だったみたいだ。


「手塚がご丁寧にも、僕にメールを転送してくれたんだ。勿論、写真もね?」

「……ちっ…」


英二先輩は悔しそうに唇を噛むと、俺の腰を抱くようにくっついてきた。


「手塚が何でそんな事したのか解らないけど、おチビは俺のモノだからな!」

「英二先輩…?」

「横から出てきて、それはないんじゃない?まぁ、リョーマが英二の方が良いって言うなら…」

「…周助の馬鹿…」

「え…?」


俺だけ蚊帳の外で会話をされるのも嫌だったけど、それ以上に…周助の言葉に傷ついたから。

確かにキスはしたけど…それは周助だって同じなはず。

部長とだって、英二先輩とだってしてたんでしょ?………嫌だ。


「周助の馬鹿!もう知らない!皆、嫌いだ!!」

「リョーマ!」「おチビ!?」


俺は走り出した。もう、周助の顔も英二先輩の顔も見たくなかったから。


「…不二、一つ教えてあげる。おチビは拒んだよ、俺とHするの」

「………」

「まだ、何もしてないから。でも…不二がそんな調子だと、俺…遠慮しないよ」

「…っ」

「早く追いかけな?今日は大目に見てあげる」

「それは僕の台詞だよ…。次に手を出した時は、許さないから…」















































「…ぐ…うぅ…」


我慢しようとする度、零れ落ちる涙。

誰にも見られたくなくって、少し寂しい路地に入った。


「なぁ、何泣いてんの〜?俺達と楽しい事すれば、気分も晴れるかもよ?」

「…!?」


ヤバイ…いつの間にか、変な男達に囲まれてた。

…逃げ切れるかな。


「……」

「おいおい、逃げる事はねーじゃん。遊ぼうぜ〜?」

「や、やめろ!」


服を脱がされそうになって、俺は恐怖を感じた。

周助の時の怖さとは違う。もっと…身の危険を感じる。


「…あれ、こいつ男だぜ?どーする?」

「ま、いいんじゃねー?こいつぐらい可愛かったらヌけるだろ?」

「止めろ…!」


勝手な事を言う奴らに嫌気が差して、逃げようとめちゃくちゃに暴れた。


「こら、暴れんなよ!!」


バシッ!!!


「…ひ…!痛いよぉ…!助けて…!!」

「やっと大人しくなりやがったか…って、ん…ぐわっ?!」


バキッ ドカッ!!


「……ふぇ……?」


俺が恐る恐る目を開くと、男達が全員、倒れていた。

そのすぐ側に…殺気立った周助が立ちすくんでた。


「…周、助…?」

「リョーマ…、何もされなかった?」

「やだぁぁ!来るな!怖いぃ…!!」


俺に差し伸ばされた手を、バシッと叩き落した。

怖い…!周助も、結局はこいつらと一緒なんだ…


「………ごめんね、怖い思いをさせて」

「!!」


急に視界が塞がれ、身体が温かくなった。

…周助に、抱きしめられてる。


「周助…?」

「ごめん…君を疑うなんてどうかしてた」

「…う、ふぇ…周助ぇ…!」


無我夢中で抱きついて、周助の胸に顔を押し付けて泣いた。

怖くて、どうしようもなくて…でも、心のどこかで信じてた。

周助なら…きっと助けに来てくれるって。


「ごめんね…リョーマ」


周助は俺にキスすると、そのまま身体を抱き上げた。

きっと…このままホテルに行くつもりだろう。

でも、いいや。周助なら…全部あげても…。


























「…まだ僕が怖い?」

「ううん…怖くないよ」


ホテルに入って、周助はやっと、俺の身体をベッドに下ろしてくれた。

そのままキスをして、舌を絡める。口の中に別の生き物がいるのかと思うほど、その動きは巧みだった。


「リョーマ…、感じてくれてるの?」

「……うん」


俺の中心を見て、周助は驚いたような、嬉しそうな声で言った。

周助は自分の指に唾液をつけたかと思うと、その指を俺の秘部に入れた。


「ああぁぁ!ダメェ!…そんな、んん…!」

「痛い?痛かったら、止めるから…」

「痛くないけど…!でも!」


俺の身体は硬くなり、周助の指を拒んだ。


「もっと、身体の力を抜いて…!」

「む、り……ひゃあぁぁ!?」


ある一点を突かれて、俺は甲高い悲鳴を上げた。

今まで気持ち悪かった指が、途端に快感に変わった。


「ここ…?ここが気持ち良いの?」

「だ、だめぇ!おかしくなっちゃう…!」

「いいよ…。僕の前だもの…もっと乱れて」


周助が指を引き抜いたかと思うと、今度はもっと太いモノが進入してきた。

…息苦しい…


「周助…、入らないよぉ…無理…」

「大丈夫…僕を信じて…?」

「うん…」


周助だから大丈夫。周助だから信じる。

…周助が好き。

暗示のように心で呟くと、フッと体中の力を抜く事が出来た。


「あ、ああぁ…!」

「分かる…?いま、リョーマの中に入ってるよ…」

「んんぅ…周助ぇ!好き…!」

「…有難う。こんな僕を好きになってくれて。僕も、君が好きだ…」


瞬間、全身を貫かれた。…その後の事はよく覚えてない。

気が付いた時には体中を綺麗にされていて、服もきちんと着させてもらっていた。


「…僕、リョーマが好きだよ。疑ってごめん…」

「俺も…周助が好き。俺の方こそ、ごめんなさい。英二先輩について行っちゃって…」

「いいよ、それは…。君の初めてが、僕で嬉しい…」


周助が、そっと抱きしめてくれた。

温かい……。


「僕の事、忘れないでね…リョーマ」

「え…?」

「ううん、何でもない」


周助の言葉の意味が良く分からなかったけど、俺は聞き流す事にした。

…例えそれがどんなに重要な言葉だったとしても、今はどうでもいい。

こんなに幸せな時は、今までなかったから。

だから…この時間がずっと続くって、信じていていいよね?

ね?周助……